市販薬オーバードーズ

「ただの風邪薬」が、命にかかわる。薬局が年齢を聞く本当の理由——市販薬オーバードーズ

市販薬を買うとき、なぜ年齢や購入状況を聞かれるのでしょうか。過量服用の危険、販売時の確認、救急対応と継続的な相談先を薬剤師が紹介します。

無地の市販薬箱と男性薬剤師を描いた水彩イラスト。市販薬オーバードーズ、ただの風邪薬が命にかかわる、という見出し。

風邪薬を買おうとしたら、年齢や、ほかの店で薬を買っていないかを聞かれた。

「いつもの薬を買うだけなのに、どうして?」

そんなふうに感じたことはありませんか。

この確認には、使う人の年齢に合う薬かを確かめ、飲みすぎや乱用を防ぐ役割があります。一部の市販薬では、販売時に確認することが法律でも定められています。

こんにちは。諸岡調剤薬局の薬剤師、山本です。

今日は、身近な風邪薬と「オーバードーズ」、そして薬局でお聞きする質問の意味についてお話しします。

市販薬でも、飲む量を増やすと命にかかわる

オーバードーズとは、薬を決められた量よりも多く飲むことです。「OD」と呼ばれることもあります。

かぜやせきの症状を抑えるためではなく、不安やつらい気持ちを紛らわせようとして、市販薬を多く飲んでしまうこともあります。

市販薬は、使える年齢や飲む量、飲み方を守って使う薬です。処方箋なしで買えるからといって、多く飲んでも大丈夫という意味ではありません。

過量に服用すると、意識がはっきりしなくなる、呼吸に異常が出る、肝臓などに障害が起こるといった重い中毒につながり、命にかかわる場合があります。

「風邪薬だから」「前にも飲んだことがあるから」。その安心感だけで、量を増やさないでください。

すでに多く飲んだときは、すぐ医療機関へ

本人や家族が薬を多く飲んだ、あるいはその可能性があるときは、症状が出るまで待たず、すぐに医療機関へ相談してください。

意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が悪い、呼吸が苦しそうといったときは、119番で救急車を呼んでください。大量の服用や、複数の薬やお酒を伴う過量服用が疑われるときも、119番へ連絡してください。

分かる範囲で、飲んだ薬の名前、量、時刻を医療者に伝えてください。薬の箱やシートが残っていれば、確認に役立ちます。詳しく聞き出すために、救急への連絡を遅らせないでください。

年齢を聞くのは、安全に使ってもらうため

薬ごとに使える年齢や量は異なります。その確認に加えて、乱用を防ぐための販売ルールもあります。

2026年5月1日から、乱用のおそれがある一部の市販薬は「指定濫用防止医薬品」として、販売時の対策が強化されました。すべての市販薬が同じ規制の対象というわけではありません。

対象の薬を販売する際には、薬剤師や登録販売者が、年齢、ほかの薬の使用状況、対象の薬をほかの店などで購入していないかといった事項を確認します。

また、18歳未満の方には、対象薬の大容量製品や複数個を販売できません。18歳以上でも、大容量製品や複数個を購入する場合には、その理由を確認します。

確認の仕方は状況に応じて異なります。年齢を聞かれたからといって、それだけで「乱用していると決めつけられた」と受け止める必要はありません。

薬を使う人と、使い方を確かめるための質問です。ご家族の分を買うときも、誰が使う薬なのかを伝えていただけると、確認がしやすくなります。

「やめなさい」だけでは、届かないことがある

オーバードーズの背景に、不安や孤独、誰にも言えないつらさがあることもあります。

危険を伝えることは必要です。それと同じくらい、なぜ薬を多く飲みたくなるのかに耳を傾け、支援につなぐことも大切です。

身近な人の飲みすぎが気になったら、まず身体の安全を確かめてください。緊急の対応が必要な場面を除いて、叱ったり問い詰めたりするだけで終えず、本人や家族が専門家へ相談できる道を探してください。

福岡市では、精神保健福祉センターが薬物などの依存症について専門相談を行っています。本人だけで抱えず、ご家族から相談することもできます。連絡先や受付日時は、下の福岡市公式ページで確認できます。

福岡市「依存症・アディクション」
https://www.city.fukuoka.lg.jp/hofuku/seishinhoken/life/seishinhoken-center/izon_3.html

福岡市外の方は、お住まいの地域の精神保健福祉センターなどへ相談してください。こうした継続的な相談窓口は、過量服用した直後の救急対応とは分けて考えてください。

次に薬を買うときは、確認を相談の入口に

薬局で質問されたとき、気になることがあれば、短い言葉で伝えてください。

「この薬、何歳から使えますか」
「飲む量が増えていて、心配です」
「家族の薬の使い方について相談したいです」

うまく説明できなくても、気になっていることからでかまいません。

私は、薬を渡すときの確認を、困っていることを話せるきっかけにもしたいと思っています。

次に年齢や購入状況を聞かれたときは、使う人のこと、今飲んでいる薬のことを教えてください。そのやりとりから、安全な使い方を一緒に確かめていきましょう。

諸岡調剤薬局 薬剤師 山本

この記事は一般的な情報です。個別の診断や治療の代わりにはなりません。すでに薬を多く飲んだ場合は、この記事で安全性を判断せず、医療機関へ相談してください。

参考にした一次情報(2026年10月23日確認)

厚生労働省「一般用医薬品の乱用(オーバードーズ)について(一般の方へ)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/index_00010.html

厚生労働省「指定濫用防止医薬品の販売等について」(2025年12月26日通知)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc9728&dataType=1&pageNo=1

厚生労働省「市販薬のオーバードーズに対する理解と支援のために ゲートキーパーとしての薬剤師等の対応マニュアル」
https://www.mhlw.go.jp/content/001411097.pdf

東京都立病院機構「若い世代に広がる『市販薬オーバードーズ』」
https://www.tmhp.jp/kikou/iryokenkou/minnanoiryokenkou_column_od.html

福岡市「依存症・アディクション」
https://www.city.fukuoka.lg.jp/hofuku/seishinhoken/life/seishinhoken-center/izon_3.html

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